海外TVドラマと映画。あの俳優、その女優、この前出てたのは・・・を突き止める。+ 翻訳ミステリ語の謎:よくってバスターズ
どこでたブログ:この人、どこに出てたっけ日記
今さらですが、「ボルチモア・ブルース」の探偵テス・モナハン
アメリカのTVドラマを見るのと同じぐらいアメリカン・ミステリの翻訳本を読むのが好きで、出かけるときは必ず、文庫本をバッグに入れています。特に、元気のいい女性が主人公のシリーズものは、目に付く限り、かたっぱしから。そして、思い上がりもはなはだしいことに、「有名なシリーズはほとんど読んでるんじゃないかしら」と思っていました。それなのに、つい先週まで、ボルチモアの私立探偵、テス・モナハンを知らなかったなんて!お恥ずかしい。

たまたま図書館で、「ボルチモア・ブルース」を手に取り、読み始めると、もう夢中。シリーズの四作目、写真の「ビッグ・トラブル」を読み終えて、今は五作目を読んでいます。どれもすばらしい。どこがすばらしいって、一言では言えませんが、

(1) こんなに共感できる私立探偵に、というより、フィクションのヒロインに出会ったことがない。

メリーランド州ボルチモアで生まれ育ったテスの活躍の場は主にその近所ですが、「ビッグ・トラブル」は、テキサス州のサン・アントニオに舞台を移した、シリーズ中の異色作。テキサスに行く羽目になる前に、テスがこんなことを考える一節があります。

---
はっきり言って、旅の魅力というものがいまひとつ理解できないのだ。知らない顔、慣れないシーツ、滞る日常生活。それは何のため?
---

ああ、本当にそうだなあと・・・。

「あまり旅行をしない」、というテスに比べれば、ほぼ毎月東京の外に出ている私は旅行をするほうでしょうが、そのたびに、「旅が苦手だなあ」と思う。しかし、旅行という経験はすばらしい、楽しいものに決まっているので、「なんで旅行しなきゃいけないんだろう」などと疑問を呈するのが恥ずかしい、とずっと思っていました。テスによって、その気持ちが解放された・・・と言ったら言い過ぎか。

その一方で、テスはボートの選手で、毎日厳しいトレーニングをしているアスリート。私は「スポーツは体に悪い」と信じているスポーツ嫌いなので、あまりにも健康的なヒロインは苦手ですが、テスには、そこを見逃してあげましょうというぐらいの魅力を感じます。

テスは元新聞記者で、失業中に探偵になるのですが、元雑誌記者の私も探偵になろうかしら、と思ってしまうほど。


(2) テスの心理描写がすぐれている。

テスが心ではこう思っていたのに、口ではこんなことを言ってしまった、とか、こういうことをしたらまずいのはわかっていたのに、こんな態度をとってしまった、というような、細かい心の動きがリアルです。

いま読んでいる五作目の「シュガー・ハウス」に、こういう一節が。

---
テスとジャッキーは友人になってまだ日が浅かった。ふたりの関係には、男女が恋人になって半年目を迎えたときのような緊張感がある。(中略)テスたちはまだ求愛の段階で、テスのほうがやや積極的だった。ジャッキーは性格的に控えめで、人とは一定の距離を置くタイプだ。(中略)たとえば、ちょうどいま、テスは腕をつねるか抱きしめるかして、ジャッキーに直接触れたいと思っていた。だが、それは無謀というものだ。そこで、テスはレイラの頭にキスをして、ジャッキーにもそのキスが届けばいいと願った。
---

レイラというのは、ジャッキーの赤ちゃん。女同士の友情のはじまりの危うさが完璧に描かれた文章です。


(3) 登場人物の書き分けが見事。

作者、ローラ・リップマンは、人物描写のうまさで知られているようですが、本を読んでいて、何度も、あまりのうまさにうなります。

「ビッグ・トラブル」に出てくる美貌の中年女性、マリアンナ・バレット・コンイェズについて、

---
おそらく四十代後半で、(中略)服や格好で年配の女性らしくしているようだった。テスの文句なしに限られた経験では、上流階級の女性は若いままでいる方法も歳ををったように見せる方法も知っているが、居心地の良い中年に落ち着くことはほとんどない。ミセス・コンイェズの髪には丁寧なしっかりとしたウェーブがかかり、化粧は上手で完璧だった。(中略)それにもかかわらず、彼女は急いで描いた最初の下絵のような、ぞんざいな目鼻立ちで、きれいというよりは手入れが行き届いているというほうが合っていた。
---

あるいは、大金持ちの家の若い息子について、

---
その顔立ちは第二世代のコピー機のようにぼやけていた。まだ自分の顔を持っていない、とキティなら言うかもしれない。輪郭が曖昧で、肩は狭くて丸く、姿勢はヌードルのようにぐにゃりとしている。
---

どうです、この辛らつさ。しかしこのマリアンナという女性、そして覇気の無い青年の姿が、目に浮かぶようではありませんか。


(4) ボルチモアが舞台。

このシリーズでは、ボルチモアという街がもう一人の主人公というぐらい、よく書き込まれています。何が嬉しいって、ボルチモアと言えば、「ホミサイド/殺人捜査課」。そう、バリー・レビンソン・製作総指揮の、ボルチモア市警の話でした。いつも現地ロケで撮影していた1990年代の人気ドラマで、私が今まで見た刑事ドラマで一番良かったと心から思っている番組。ボルチモアの人たちにとっては大いなる誇りだったようで、このテス・モナハン・シリーズにも、ちらちら出てきます。「ホミサイド」にエキストラで出演したのが自慢の警備員とか、本当の犯罪者が、「ホミサイド」ロケ中の俳優に自首した話とか。

「ビッグ・トラブル」に、テスが警察に連行され、取調室に入れられるときの、こんな一節があります。

---
とうとうテスは、ボルチモアじゅうの住民が《ホミサイド》を見るようになってから通称を知らぬ者がなくなった、名高い”ボックス”に入れられたのだった。
---

と、今さら夢中になっている私はぼんくらで恥ずかしいほど、テス・モナハンは人気があるんですね。アメリカではありとあらゆるミステリ関連の賞を受賞し、新作が出るたびに大ヒット。あんまりおもしろいので読むのが止められない、でも、読み終わってしまうのが寂しいからゆっくり読みたい、ああどうしたらいいのでしょう。


----

8月6日に一言追加。

ボルチモアの作家と言えば、ウィリアム・ハートの映画「偶然の旅行者」(原題:Accidental Tourist)の原作で有名なアン・タイラー。出るとすぐ読む大好きな作家のひとりです。そして、やはりボルチモアの人の誇りでもあるらしく、このテス・モナハン・シリーズには、ときどき、アン・タイラーのことがちらちらっと出てきます。テスが初めのうち一緒に住んでいた叔母のキティは本屋さんをやっているので、そこには当然置いてあるし、「アン・タイラーは個性的な人」なんてテスが言う場面もあります。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )   books & the media / 2006-08-03 11:10:54
前の記事へ 次の記事へ
 コメント
Unknown (cookie)
2006-08-04 11:05:25
ブログを読んで、昔だったら、本屋さんか古本屋さんにはしるところですが、今朝はアマゾンを訪ねて、さっそく9冊彼女の本を注文しました。面白い本をいつも探していても、見逃してしまうものです。9冊のなかに1円という本が2冊もあるので、どんな風な本がくるか楽しみです。
教えてくださりありがとう。
私みたい (高嶋)
2006-08-04 12:11:19
Cookieさん、こんにちは。私みたいな反応だなーとびっくり。私も、「おもしろそうな作家」と思うと、いきなりアマゾンに行ってまとめ買いをしてしまうのです。日本ではなぜか「ボルチモア・ブルース」の前に「チャーム・シティ」が第一作として出版されたのですが、「ボルチモア・シティ」を先に読んでくださいね。そしてぜひご感想をお聞かせください。

私は五作目の「シュガー・ハウス」を読み終えたところです。これまでの作品に比べてハラハラ度が高く、主人公、テスにすっかり感情移入している私にはちょっと辛いものがありました・・・。
コメントを投稿する
名前
タイトル
URL
コメント
規約に同意の上 コメント投稿を行ってください。
 この記事のTrackback Ping-URL
http://blog.goo.ne.jp/tbinterface.php/4cc5e9cd80712ee9d4c4e08451477218/df
 goo ブログ
gooID:
パスワード:
ログイン状態を保持する
ブログの作成・編集 ブログの作成・編集
 gooおすすめリンク
goo トップ
goo ブログ トップ
gooメール
THE BLOGGER'S NEWS
第88回 全国高校野球

このブログを自分のRSSリーダーに登録して毎日チェックしよう!ブログをリーダで読む

チーム・マイナス6%エコ家電プレゼント!

【今週のお題】
花火大会やお祭
  行きましたか?


携帯
携帯からもアクセス

QRコード使い方
QRコード対応携帯からアクセスできます
2006年8月
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
前月 翌月
2006年08月
2006年07月
2006年06月
2006年05月
2006年04月
2006年03月
2006年02月
2006年01月
2005年12月
2005年11月
2005年10月
2005年09月
2005年08月
2005年07月
2005年06月
2005年05月
2005年04月
2005年03月
熱田千華子「イースト・コースト インターネット暮らし」刊行
「エド」のドクター、「コールドケース」の被害者に
「フレンズ」でも「ジョーイ」でもキレているアダム・ゴールドバーグ
「ザ・シールド」の極悪人=「コールドケース」の刑事スコッティ
「ホミサイド」の寄り目な二枚目、リード・ダイアモンド
「LOST」のスキン・ヘッド御曹司、トニー・リー
「ザ・シールド」のダッチが「コールドケース」では・・・
「デス妻」配管工がTWWの検察官だった頃
どこかで見たような「最後の恋のはじめ方」のジェフリー・ドノバン
ぽちゃっとしたフレッド・コーラー、「ER」と「コールドケース」に
高嶋/「デス妻」配管工がTWWの検察官だった頃
mimitaro/「デス妻」配管工がTWWの検察官だった頃
高嶋/「ザ・シールド」の極悪人=「コールドケース」の刑事スコッティ
yasishi/「ザ・シールド」の極悪人=「コールドケース」の刑事スコッティ
高嶋/「ザ・シールド」のダッチが「コールドケース」では・・・
yasishi/「ザ・シールド」のダッチが「コールドケース」では・・・
けいじ/どこかで見たような「最後の恋のはじめ方」のジェフリー・ドノバン
高嶋/アジア系俳優の巨星、マコ岩松逝く
高嶋/今さらですが、「ボルチモア・ブルース」の探偵テス・モナハン
那須五郎/アジア系俳優の巨星、マコ岩松逝く
自分のブログを読んで貰ってコメントをもらうには?(知って得する!トリビアの泉)
ジェニファー・アニストン 「レイチェルをまた演じたい」(ハリウッドセレブ★ゴシップ集)
チャームド〜魔女3姉妹〜☆DVD続々発売♪(外国語学習的ブログ by 語学中(英語とスペイン語))
気になるあのひと(MOMOCINEMA)
CSI:マイアミ3 #24(海外ドラマDiary)
米国TVランキング: 2/20(月)〜 2/26(日)(アメリカに暮らす)
米国TVランキング: 2/13(月)〜 2/19(日)(アメリカに暮らす)
米国TVランキング: 2/6(月)〜 2/12(日)(アメリカに暮らす)
発覚!!(探偵工作ファイル)
仮面(Das Ende von dieser Welt)
この人、あれに出てた(291)
アジア系発見(89)
早く見たい(かも)(4)
この話ってどうなのか(6)
やせたり太ったり(3)
about me(8)
翻訳ミステリの謎:よくってバスターズ(14)
books & the media(5)
World Blog Watch 
世界のブログ事情と日本のブログとの比較
女友だちの賞味期限
話題の新刊『女友だちの賞味期限』を十倍楽しむサイト
goo ID
dokodeta
性別 女性
都道府県 東京都
自己紹介
翻訳を手がけた『女友だちの賞味期限』(プレジデント)発売!どうぞよろしく〜。夫と二人暮らしながらソファとTVを完全独占中。
URLをメールで送信する URLをメールで送信する
(for PC & MOBILE)
XML